大阪府の保健師として仕事をする中で人の生活に深く関わるようになり、社会は不平等があふれていて、その犠牲になるのはいつも子どもやマイノリティの人たちなんだと知りました。
結核、HIV感染症、難病、虐待、貧困等々様々な人に出会い、その全てに共通していることは、その人自身には何の責任もないことで孤立させていく社会の構図だと感じました。自分自身も生活しているひとりの人として考えた時、人の幸せとは孤立せずに生きることなのだと思います。
ある時母が私に言いました。「わが子の幸せを願うなら、その子と一緒に生きていく他の子どもが幸せじゃないと成り立たないよ。」と。私が家族主義的な考え方から抜け出したいと思うきっかけとなりました。自分も地域の中で何か行動したいと考えるようになりました。
保健所の母子チームの仕事の中で出会った重症心身障がい児と言われる子ども達とその家族。生活そのものがとても不平等に思えました。子どもを育てることが家族、特に母親の役割を担う人にだけ押し込められている現状を変えたい、くらし企画で、生活を一緒に考え創っていきたいと思いました。
何かを決めたり行動する時、私はいつも人との出会いで決めてきたと振り返ります。何をするかも大事だけれど、誰とするか、誰と出会うか。数々の人との出会いを積み重ねてこれまで歩んできたのだと思います。
くらし企画誕生から10年。何ができて何ができていないのか。何を考えてやってきたのか、これからどうしていきたいのか。日々流れていく時間の中で立ち止まって振り返り、記録しておく冊子を10年を記念して作成することになりました。
ずっと変わらずに大切にしてきたこと、それは「人と人との関係性」です。くらし企画では、10年間で拠点が3か所に増え、年齢、職種、多様な働き方で、現在総勢70名ほどの人がその日のチームメイトとして日々活動しています。
人が集まるとそれだけパワーが産まれ、同じだけトラブルに発展する可能性も出現します。力を合わせるからこそ可能になることも多くある一方、意見や考え方の違いで時にはぶつかったり、悶々と考え込んだり。解決するハウツーは存在せず、10年間変わらず繰り返してきたことは、「思ったことを何でもざっくばらんに話し合える関係性であることを信じて話してみること。」だと振り返って思います。
ともに働く人同士の関係性に加えて、子どもたち、その家族との関係性も同様で、ともに生きていくとはどういうことか、信頼関係を築くとはどういうことなのか、「利用する人とサービスを提供する人」の枠を越えた関係を築きたいと考えてきました。
全てのことは人と人との対話から始まる、近道はなく丁寧に向き合っていくことの積み重ね、そんな日々がくらし企画を創ってきました。
大切にしたいことは何か、迷ったら立ち戻る理念があり、試行錯誤の日々。そんな日々の中からトピックス的なことを冊子としてまとめることで、明日からまた続いていく物語の道筋を見つけていけたらいいなと思います。
田島茂恵
